最近はいおり先輩の好きアピールに押されてばっかりだ。


 私って、押しに弱かったのかな…?


 いおり先輩は冷蔵庫をのぞいて少し思案してから、お湯を沸かしはじめた。


 なにを作ってくれるつもりなんだろう…?


 普段は自分がキッチンにいる側だからか、ダイニングテーブルで待っているだけ、というのは、なんだかそわそわする。


 小さい頃はよく、ここからお母さんがご飯を作るのを見ていたっけ。


 懐かしく思いながらも、いおり先輩を見守る。


 野菜を切る手つきも、次の工程の準備もすごく手際がよくて、いおり先輩って本当になんでもできるんだな…って感心してしまった。


「美桜、できたよ」


 いおり先輩はそう言って、私の目の前にどんぶりを置いた。


「かきたまうどん…!」


 それはお母さんが私によく作ってくれたご飯。


 私がいおり先輩に初めて作ってあげたご飯だ。


「ほうれん草入りかきたまうどん。風邪のときはいつもこれ、って美桜言ってたでしょ?」


「はい!」


 ほかほかと湯気のたつかきたまうどんを目の前にして、私のお腹がぐぅーと鳴った。


「いただきます!」


 両手を合わせて、さっそくいただくことにする。


 私の目から、自然と涙が伝った。


「美桜…?どうした?あまりにまずすぎるとか…?」


 いおり先輩がめずらしく慌てたような声を出す。