いおり先輩は相変わらず不思議な人のままだった。
私のご飯を気に入ったようで、よくうちで晩ご飯を食べて帰る。
紅茶の支度をするいおり先輩をちらりと見れば、出会ったときよりも顔色が良く、元気そうに見えた。
先輩が食べることを好きになって、元気ならそれでいっか!
先輩に対して後輩の私がお小言を言うのも変な話なので、その辺は世間話程度に流しておく。
「美桜、俺の顔になにかついてる?」
「え?」
私の視線に気が付いていたのか、いおり先輩は整った顔をこちらに向ける。
「あ、いや、なにも!」
「俺の顔に見惚れてただけか」
「いや別にそういうわけでもないです」
「…………。こうやってキッチンでふたりで並んでると、夫婦っぽくない?」
「夫婦…ですか?そうなのかな?よくわからないけど…」
「………。美桜って意外と毒舌?」
「え?そうですか?」
そんな他愛もない会話をしながらおやつの準備をして、焼き上がったクッキーと、いおり先輩の淹れてくれた紅茶をダイニングテーブルに並べた。