「もしかして美桜、俺にドキドキしてる?」


「……!!」


 いおり先輩に、ドキドキ?私が?どうして?


 真っ赤になって目をぱちくりさせる私を、いおり先輩は優しく抱きしめる。


「美桜も俺と同じ気持ちになってくれたらって、ずっと願ってるよ」


 その甘いささやきのせいで、私の身体はますます火照ってしまった。




 いおり先輩のこと。期末テストのこと。今日の晩ご飯のこと。


 考えなくてはいけないことがたくさんある中、また一つ、悩みごとがやってきた。


「進路希望調査表を配ります。まだ志望校のことなんて早い、と思っているかもしれませんが、少し高校のことを調べてみてください。来週提出です」


 帰りの会で担任の先生から配られた「進路希望調査表」に、クラスみんながそろって嫌な顔をした。


 去年中学に入学して、やっと慣れて自分のペースで過ごせるようになった二年生。


 それなのにもう進路希望だなんて…。


 たしかに来年は受験生だ。


 受ける高校を早めに決めて、勉強に取り組んだ方がいいとも思う。


 だけど、まだ丸々一年以上ある。


 高校のことなんて、全く想像がつかなかった。