「美桜、ありがとな」
一葉くんがぽつりとつぶやく。
「うん?」
カレーを口いっぱいに詰めこんでいた私は、顔を上げて聞き返した。
「やっぱりご飯はだれかと一緒に食べるのがいい。それが、好きな人ならなおさら」
「うん!そうだよね!」
「……予想通りの反応だな。まぁ、美桜のそういうところも好きなんだけど」
「??」
一葉くんの言った意味がいまいちわからず首をかしげていると、ガチャッと玄関で音がして、だれかがあがってきた。
「やあ、いい匂いがしてるね。今晩はカレーかな?」
「ただいまぁー、超疲れたぁ!カレー私も食べたい~」
「いおり先輩!お姉ちゃん!おかえりなさい!早く一緒に食べよう!」
私はふたりの分のカレーを用意すべく、さっと立ち上がった。
「美桜」
「なあに?一葉くん」
一葉くんに呼び止められた私は、彼に向き直った。
「俺にも、料理ってできるか…?」
「え?」
「今度、母さんと父さんが帰って来た時に、俺がご飯を作ってあげたいんだ」