一葉くんは自分の手に気をつけながら、さくさくと野菜を切っていった。


 私が教えることを忠実にすんなりやってしまうものだから、これは家庭科部に入部してくれないかなぁ、なんて思ってしまった。


 一葉くんが陸上部に入っていなけれぼ、積極的に誘ったんだけどな…。


 一葉くんと、小学生の頃にカレーを作った時はもっと野菜がぼろぼろだったとか、飯ごう炊飯でお米を炊くのが難しかったとか、そんな思い出話をしながら、楽しくカレーを作った。


 だれかとする料理のいいところは、その料理の思い出話で盛り上がったり、おしゃべりしたりして楽しく作れるところだよね。


 こんなふうにだれかと料理するのは、お母さんと作っていたとき以来かもしれない。


「完成だ」


 平皿にお米とカレーをよそって、一葉くんは満足そうにそれらをキッチンテーブルに並べた。


「「いただきます」」


 ふたりそろって手を合わせてカレーを食べ始める。


「福神漬けとらっきょうも用意しておくね」


 カレーだけでももちろんとってもおいしいけれど、なぜだかこの二つがあるとさらにおいしくなるんだよね!


「どう?ふたりで作ったカレーは?」


 当然答えはわかっているけれど、やっぱりはっきりと口に出してほしい。


 一葉くんは微笑むと、うん、とうなずいた。


「すげーうまい」


「だよね!すっごくおいしい!」


 私もそう思う!


 楽しく作ったカレーだもん!おいしくないわけがないよ。