「うちのお姉ちゃんが言ってたよ」
「美桜の姉ちゃんに話すとすぐ広まるな」
「そりゃ姉妹ですから!ていうか!どうしてもっと早くに教えてくれなかったの?」
「なんで美桜に教える必要があるんだ」
「大事な幼なじみが独りでご飯食べて、さびしい思いをしてるなんて、嫌だよ」
「別にさびしくなんか…」
私はゆっくりと首を横に振った。
「独りで食べるご飯はさびしいよ。ご飯はみんなで一緒に食べるものだよ」
「別にどうだっていい。独りで食べようが、大人数で食べようが、結局味は一緒だろ」
「本当にそう思う?」
「え?」
冷たく言い放つ一葉くんの瞳を真っ直ぐに見つめる。
「この前ね、一葉くんがうちに来て、一緒にハンバーグを食べてた時。一葉くんうれしそうに、おいしそうに食べてくれてたんだ。それを見て私もすっごくうれしくなったの」
私はていねいに、一葉くんに気持ちが伝わるように言葉を紡ぐ。
「さびしい気持ちを無視しちゃだめだよ。一葉くんは、みんなで一緒に楽しく食べるのが好きなはず。だって小さい頃からそうして過ごしてきたんだから」
一葉くんのご家族はとても仲が良くて、晩ご飯は必ず一家そろってから食べていた。
それがここ数年、ご両親が多忙になってしまった。
一葉くんも中学に上がって陸上部に入ったから、部活動で遅くなることもしばしば。
家族で一緒にご飯、が当たり前だった一葉くんにとって、さびしくないわけないのだ。