「美桜のおかげで、俺は全力で走れた」


「い、いや、そんなことは…」


 いおり先輩の顔がどんどん近くなっていく。


「ねえ、俺、がんばって走ったんだから、ご褒美(ほうび)くれるよね?」


「ご、ごほうび…??」


「美桜の唇、おいしそうだから食べてもいい?」


 それって……キスするってこと!?


 そ、そんなの…心の準備ができてるわけないよ…!


「あ!ご!ご褒美!!きょ、今日はデザートにいおり先輩の好きなスイートポテトでも作りましょうかね!?ちょうどご近所さんから、たくさんさつまいもをもらったので!!」


「俺は美桜とキスしたいんだけど」


 表現が直接的すぎるっ…!!


 キスって、私といおり先輩は付き合ってもいないのに…!


 私の身体は沸騰(ふっとう)寸前だった。


 いおり先輩から距離を置くように、私は慌ててキッチンへと向かう。


 しかし、今日のいおり先輩は私を逃がしてくれなかった。


 腕をつかまれ、そのまま抱き寄せられる。


「ねえ、美桜はどうしたら俺のこと好きになってくれる…?」


 そんな甘い言葉を耳元でささやかれて、私の頭はくらくらしだした。