「いやいや、?、じゃないですよ!いおり先輩がリレーに出るなんて聞いてません!それにあんなに足が速いなんて!すっごくかっこよかったですよ!」


「美桜に褒められるなんて、初めてのことじゃない?うれしいなぁ」


 いおり先輩はいつも通りのひょうひょうとした反応で返す。


「もっと、一位取れてうれしいー!!とか、ないんですか?」


 いおり先輩はあまりに普段通りすぎる。


 見ている私の方が興奮しちゃったよ。


「んー、まぁうれしいにはうれしいけど。一葉くんからのバトンパスもうまくいったからね。チームメイトもそれぞれがんばってたし。俺一人の力じゃないからなぁ…」


「!?!?」


 いおり先輩の口から飛び出した言葉に、私は目を見開く。


「あなた、本当にいおり先輩ですか!?」


「…美桜、失礼なことを言われていることくらい、俺でもわかるよ?」


「だって!!」


 いおり先輩がみんなのおかげだ、とか、チームメイトの力があってこそだ、なんて、そんなちゃんとしたコメントをするはずがない。


 私の知っているはずのいおり先輩が、協調性があったなんて…!


 私はがっくりとうなだれる。


 こんなにいつも一緒にいるのに、いおり先輩のこと、私全然わかってないんだなぁ。


「まぁ、一番は美桜の応援があったからがんばれたんだけどね」


「へ?」


「一葉くんのときも応援してたでしょ?俺も応援されたいなーって思ってたら、美桜、すっごい大きい声で応援してくれてさ」


 いおり先輩はそのときのことを思い出すかのように笑った。