「美桜、ありがとう。すごくおいしかった。俺を助けてくれてありがとう」
「助けるだなんて!大袈裟ですよ、私はいおり先輩が元気になって楽しくご飯が食べられればいいなって、思っただけです」
「うん」
いおり先輩はおもむろに私の手を取ると、その手の甲にちゅっと音を立ててキスをした。
「!?!?」
身体中の体温が一気に上がった気がした。
「美桜、これからも俺のご飯になってくれる?」
「へ?」
「俺、美桜が作ったご飯、毎日でも食べたいな」
「あ、ああ!ご飯!ご飯を作ってほしいってことですね!?」
「他になにがあるの?もしかして、自分が食べられちゃうって思った?」
いおり先輩は少しいじわるに笑う。
なんだかまた頬が熱くなったような気がする。
「いおり先輩、私のこと食べかねません!さっきだって噛みつかれたし」
「美桜からおいしそうな匂いがするからだよ?」
「だとしても、人間は食べちゃだめです!」
「残念」
言葉とは裏腹に全く残念に思っていなさそうないおり先輩。
本当につかみどころがないというか、不思議な先輩だ。
けれどその表情は出会った頃よりも少し明るく見えた。