「ギュスターヴ、ごめんなさい……」


 私はグスグスと洟を啜りながら、涙を拭ってくれるギュスターヴの手を握り締めました。

「ギュスターヴの精気……くどいって言ってごめんなさい」
「よしよし、どうした。いきなり殊勝だな」
「ジゼルのに比べれば、あなたのなんて生臭いミルクくらいなものでした」
「……なぜだろうな。素直に喜べない」

 腑に落ちない顔をしながらも、彼が口直しに精気を吸わせてくれます。
 やはりちょっとくどいとは思いましたが、さすがに口には出しませんでした。
 しかし、彼の精気のおかげでしょうか。擦りむいた膝がたちどころに治りました。
 それを見た私はふと、思ったのです。

「……精気は、吸うことしかできないのでしょうか」

 例えば、私の精気をヒヨコに分け与えることができたとしたら、この膝の傷みたいに、彼のフードの下の顔も治ったりしないでしょうか。
 試してみる価値はありそうです。

「ヒヨコ、ちょっと……ちょっと、いいですか?」

 早速、ギュスターヴの腕の中からヒヨコに手招きをします。
 好奇心は猫をも殺すといいますが……よくよく考えれば、私は猫ではありませんもの。
 一人でそう完結した私は、素直に隣にしゃがみ込んだヒヨコに顔を寄せようとして……

「──アヴィス」