「私の子に文句があるというのならば、私が代わって聞こうではないか」


「ま、魔王様……」

 ギュスターヴの長い足の間から見えたジゼルの顔は、恐怖で引き攣っていました。
 ただでさえ青白い肌が、死人のヒヨコのそれのように青さを増しています。
 ついにはガタガタ震え出した彼女の手を、ヒヨコがすかさず振り解きました。

「……っ、このっ……死人のくせにっ!!」

 慌てて捕まえようとするジゼルの手を躱し、ヒヨコは床に足が付く前に大きく剣を振り抜きます。
 悲鳴を上げる間もなく、吸血鬼の首が宙を舞いました。
 長い黒髪と吹き出た血が同じ弧を描きます。
 にもかかわらず、その澱んだ両眼はギョロリと動いてヒヨコを睨みつけ、首無しの身体も再び彼を捕らえようと動くのです。
 きっと、刎ねた首だってすぐにくっついてしまうのでしょう。

「どうすれば……どうすれば、いいの……」

 不死身の相手を、一体どうやって倒せばいいのでしょうか。
 私が床に倒れ込んだまま、絶望に打ち拉がれそうになった時です。
 ふいに目の前の額縁が……いえ、私が覗き込んでいた股座の主が口を開きました。

「そこのヒヨコ──貴様に、吸血鬼の滅し方を教えておこう」
「……っ、魔王っ!!」

 とたん、ジゼルの生首が凄まじい形相で叫びました。
 なんでもいいですが、いい加減こわいです。
 夢に見そう……眠れればの話ですけれど。