『ギャアアアア!!』


 喉が枯れんばかりの悲鳴を上げて、吸血鬼達がのたうち回り始めたのです。

「やっぱり! 魔界の光でも利くんだわ!」

 ここからの、ヒヨコの状況判断と決断力は目を見張るものがありました。
 床に転がる吸血鬼達を踏みつけて、即座に前進。
 再度、包囲網の突破に成功します。
 私も彼の腕から身を乗り出して、手当たり次第にカーテンを開いていきました。
 光を浴びたとて吸血鬼達が即滅びるわけではないようですが、ただ切った張ったするよりは断然時間は稼げます。
 ぐしゃぐしゃと蹴倒し踏みつけて、私を抱えたヒヨコは死屍累々のごとき廊下を猛然と駆け抜けました。
 そんな中、廊下の突き当たりに光が漏れている場所を見つけた私は叫びます。

「ヒヨコ、あの部屋の中へ!」

 光が溢れる部屋の中に吸血鬼はいないはずです。
 ヒヨコも同感のようで、扉の側でうろうろしていた吸血鬼をばっさりと薙ぎ払うと、息つく間もなく部屋の中に飛び込みました。
 すぐさま扉を閉め、鍵をかけます。
 廊下に溢れた吸血鬼の大半はまだ光を浴びた衝撃から立ち直っていないのでしょう。
 カリカリと引っ掻く音や呻き声は聞こえてきましたが、今すぐ扉をぶち破って追いかけてくる元気はないようでした。

「よかった……」

 私はようやくヒヨコの腕から降りて、ひとまずほっと安堵のため息を吐きます。
 そんな私の手を引いて、ヒヨコは早々にカーテンが開け放たれた掃き出し窓に向かって歩き始めました。
 吸血鬼達が復活して押し寄せてくれば、きっと扉などすぐに壊れてしまうでしょうから、彼らを足止めできている今のうちに、ベランダから安全に下に降りる手段を探ろうというのでしょう。
 私は大人しく彼についていきながら、部屋の中を観察します。
 随分と広くて立派な、言うなれば当主の部屋といったところでしょうか。
 調度はどれも古めかしい印象ですが、手入れは行き届いているように見えました。
 部屋の中ほどには低いテーブルを囲んで、赤いビロードのソファが、一つ、二つ、三つ、四……