ピコン
場違い極まりない軽快な音を立てて、新たなリプライが届きました。
私はもはや何の期待も持たず、ヒヨコとくっついたままおざなりに携帯端末の画面を覗き込みます。
ところが、そこに表示された相手の名前に、私の心臓はたちまち大きく高鳴るのでした。
「はわっ……ゴッドさん!?」
赤褐色の賢そうな猫をアイコンにしたアカウント名〝ゴッド〟さんは、何を隠そう、私のフォロワー第一号。
普段は猫の写真ばかり投稿していますが、私の呟きには逐一イイネをくださるまめな方です。今朝のギュスターヴの寝顔にだって、真っ先に反応してくれたのでした。
「はわわわ、ゴッドさんからの初リプ……」
自分の置かれた状況も忘れて、私はすっかり舞い上がってしまいます。
ヒヨコの耳には、きっとうるさいくらいの心音が届いていることでしょう。
興奮冷めやらぬまま、私は携帯端末を恭しく両手で持って、ようやくゴッドさんからの返信に目をやります。
そこに書かれていたのは……
「……日光」
ゴッドさんが挙げたのは、この魔界では決して得られぬものでした。
地界の地面に阻まれ、太陽の光は一欠片も届かないのですから。
一瞬がっかりしかけた私ですが……ふと、あることに気づきます。
「日光の届かない場所にありながら、この吸血鬼の館が昼日中からカーテンをぴったり閉め切っている意味は……?」
ここまで呟いてはっとした私は、すぐ背後の窓を締め切っていたカーテンを引っ掴みました。
そうして、えいやっとばかりにそれを全開にし、屋敷の中に光が差し込んだとたんです。