「なにが──何が、〝私の子〟だ! 何が、〝お父さん〟だ!!」
残った片翼がバサバサと宙を掻き、切り裂かれた傷口から溢れた血がまた足下の草を枯らす。
カリガは凄まじい形相でギュスターヴを睨みつけて続けた。
「あの子のアカウントに、あんなひどい名前を付けさせて! その上、あんな……あんな、むごたらしい写真をアイコンにさせているくせにっ……!!」
「いや、待て。貴様、もしかして会員制交流場のことを言っているのか? だとしたら誤解だ。我々とて、さすがにあれはいかがなものかと散々止めたんだぞ?」
「まったく、聞く耳持ちませんでしたけどねぇ。これが、ジェネレーションギャップというものでしょうか」
正論を述べたというのにうるさがられて、早々にブロックされてしまった魔王と側近は、揃って悩ましげなため息を吐く。
しかし、そもそも話を聞く気などない天使は、わなわなと震えながらさらに言い募る。
「今朝なんて、あんな純真な子を寝所に連れ込んで……何という破廉恥な! 恥を知りなさいっ!!」
「なぜ、私の寝所での出来事を知っている? 貴様、もしやストーカーか?」
「実はですね、魔王様。私、あの子の投稿を別アカから観察しているんですけれど……今朝、アヴィスが魔王様の寝顔を勝手に撮って投稿したんですよ。すごい数のイイネがついて、えげつない速さで拡散されています」
「ストーカーは貴様か。……しかし、しまったな。ネットリテラシー教育を怠っていた」
ちなみに、イイネとリツイートの数は今もまだ猛然と増え続けていた。
それを、フォロワーのフォロワー経由で目撃したらしいカリガは、怒りで全身をブルブル震わせながら叫ぶ。