(もしかして……仮装パーティーでも催されていたのでしょうか?)

 骸骨の仮面を付けた者や両のこめかみから角が突き出ている者、目をやるのが憚られるような際どい格好をした者、さらにはコウモリみたいな翼──ただし、どピンク──を生やした者までいるのです。
 彼らの色とりどりの瞳に食い入るように見つめられて、私は何とも落ち着かない気分になりました。
 落ち着かない理由は他にもあります。
 どういうわけか私は、血で汚れた空色のドレスも何もかも取り払った状態で立っていたのです。

「わたし、すっぽんぽん……?」
「うむ、実に堂々としたすっぽんぽんだな」

 不思議と羞恥は覚えませんでしたが、銀色頭の男性が自身のマントを脱いで包んでくれました。
 床に引きずるほど長いそれはずっしりと重く、けれども襟のふかふかが存外心地よくて、私は自然と目を細めます。
 
「おや、かわいそうに。足が冷たいでしょう?」
 
 ふいに横から現れた別の方がそう言って、ツルツルの大理石の床に素足で立っていた私にもこもこのスリッパを履かせてくれました。
 こちらは、銀色頭とは色も雰囲気も対のように見える、司祭のような真っ白いローヴを纏った優しげな男性です。
 その方の長い金色の髪と晴れた日の空みたいな青い瞳にエミールの姿が重なって、胸の奥がズキリと痛んだ気がしました。
 とっさに裸の胸を片手で押さえた私は、しかしここで、はっとします。

「……鼓動が、あります」