あのパーティーで、第二王妃も誰も私の殺害を企んでいなかったという国王陛下の言葉を信じるならば、最終的に毒入りワインを用意した給仕が疑わしくなります。
 そうして、その給仕の顔と、虫の息の私を迎えに舞い降りてきたせっかちな天使の顔が一致したとなれば、それはもう偶然ではないでしょう。

「私……天使に殺されたんだわ……!」

 全知全能の神の使い。
 善人の魂を天界へと導く救い。
 そんな清廉潔白の代名詞のような存在が、人に身を窶してまで私を殺すだなんて。

「ひどい……ひどい、どうしてっ……!!」

 悲しみ、悔しさ、喪失感、そして凄まじい怒り。
 それらがぐちゃぐちゃに混ぜ合わさって、私の中で出口を求めて荒れ狂います。
 その間も相変わらず悠然と歩を進めるギュスターヴの肩に、私はたまらずしがみつきました。
 そんな私の髪をあやすように撫でながら、なるほど、と彼が呟きます。

「天使はよほど、お前の魂を天界に連れて行きたいようだな。自然に死ぬのも待てなかったか」
「どうしてですか……どうして……」
「さて、どうしてだろうな。だが、その天使が諦めていないのは確かだ。今もまだ、お前の魂を返せと言っているらしいからな」
「──っ!?」

 それは、私の中でぐちゃぐちゃに混ぜ合わさっていたさまざまな感情が、一つに──全てが怒りに呑まれた瞬間でした。