「ジョーヌは、死んだ」


 ザクッザクッ、と背後でさらに雪を踏みしめる音が響きます。
 私は、ゴクリと喉を鳴らしてから問いました。

「……死んだ? 殺された、ではなく?」
「ああ、城の裏の池に身を投げたのだ。アヴィスが謀殺されるきっかけを作ったと思しき公爵令嬢とその一家……そして、母を斬り殺してからな」

 第二王妃の生首の素晴らしい断面は、なんとその息子の仕業だったのです。
 当然のことながら、私は重ねて尋ねました。

「なぜ……なぜ、ジョーヌ王子はそんなことを……?」

 すると、国王陛下はのろのろと顔を上げたかと思うと、私をさも憎々しげに見据えて言うのです。

「ジョーヌはね──アヴィス、君を愛していたんだよ。君はエミールしか見ていなかったから、ちっとも気づいていなかっただろうがね」