グリュン城の庭園は、一面真っ白い雪で覆われていました。
 そんな中、国王夫妻の首が無造作に晒されています。
 雪の上に広がった第二王妃の赤い髪が、一瞬血の海のように見えました。
 さしもの私もこれには言葉を失い、ヒヨコも一歩後退ります。
 ところが……

「……蘇ったのかい、アヴィス」
「まあ、生首がしゃべった」

 ふいに、国王陛下が光のない目で私を見上げて口を開いたのです。
 どうやら国王陛下は生首ではなく、首から下が雪に埋まっているだけのようです。
 ちなみに、門番の大腿骨でツンツン突き回してみたところ、第二王妃の方は正真正銘生首でした。
 それにしても、両目をかっぴらいて凄まじい形相。夢に見そうです。
 よほどスパッと容赦なく首を落とされたようで、断面はとても綺麗でした。
 私は第二王妃の生首を元通りに置き直すと、今度は国王陛下の頭をツンツンしながら尋ねます。

「国王陛下、こんなところで何をなさっているんです? 砂風呂ならぬ雪風呂でしょうか? 随分と酔狂なご趣味ですね」
「そんなわけないだろう。埋められたんだ、無理矢理ここに」

 首まで埋まっていなかったら、きっと国王陛下は肩を竦めていたでしょう。
 当然私は尋ねます。一体誰に、と。
 すると国王陛下は、第二王妃の生首よりもなお青い顔をして、思ってもみないことを告げたのです。