この日の夕暮れ時、一つ新しいスレが立った。
 タイトルは、『旦那の股間が爆発した』
 スレ主は、ワンオペシングルファーザー魔王を温かく迎え入れてくれた、あのボスママだ。
 なお、888くんは3ゲットしていた。

「結局、クラーラのお母様はママ友グループに入ったのですか?」
「入ったな。さっそく魔女に慰謝料の請求をしている」
「まあ、逞しくていらっしゃいますね。仲裁しなくていいのです?」
「必要ない。魔女は言い値で払うだろうからな」

 ふわわ、とアヴィスが大きくあくびをする。
 この日は結局一日中町を歩き回った上、さまざまなハプニングに巻き込まれて疲れているのだろう。
 ギュウスターヴはそんな彼女を、可愛くてたまらないと言いたげな顔をして見守っている。
 アヴィスは瞼を重そうにしながら、憂いを帯びた声で続けた。

「クラーラのお母様は、族長の妻の矜持から気丈に振る舞っていらっしゃるのでしょうね……でも、きっと傷ついていると思うのです……」
「そうだな」
「影で……一人で、泣いていらっしゃるかも、しれません……ははの、ように……」
「……アヴィス?」

 すとん、とアヴィスが眠りに落ちた。
 彼女が残した意味深な言葉を、ギュスターヴは頭の中で転がす。
 どうやら、ローゼオ侯爵家にも何やら問題があったようだが……

「どうでもいいか。アヴィスは、今はもう私の子だ」

 ギュスターヴはそう呟き、アヴィスの伏せられた瞼にそっと口付けを落とす。
 午後十時を回り、魔王も就寝の時刻となった。