時刻は間もなく午後十時を迎える。
 魔王の寝室では、部屋の主であるギュスターヴとアヴィスが、ベッドに仲良く体を並べていた。

 ──美貌の魔王とあどけなさを残す少女がベッドイン

 これだけ聞くと、官能的なシーンが思い浮かぶだろうが……

「ギュスターヴ、不貞はいけないことだと思うのです」
「同感だな。お父さんもそう思う」

 あいにく、彼らの間に色欲など一切存在しない。
 散々渋った末、ようやくベッドに横になったアヴィスの背中を一定のリズムでトントンしながら、彼女の言葉にギュスターヴが頷く。
 今宵はLED照明の一斉メンテナンスで魔界が真っ暗になると忠告されていたため、アヴィスを出歩かせないよう寝かしつけるのに必死なのだ。

「魔女の方は、ちゃんとクラーラに謝りましたよ。でも一番罪深いのは、クラーラとお母様を裏切ったドラゴン族の長です」
「そうだな。ちょん切るか?」

 アヴィスは首の話だと思ったが、ギュスターヴの視線は下の方に向いていた。