「そうでした。ギュスターヴ、こちらのクラーラにとてもよくしていただいたのです」
「そうか。私の子が世話になったな、ドラゴン族の姫。礼を言う」
「いえっ……め、滅相もございません……」

 私のほっぺをハムハムしているギュスターヴと、先日のガチギレっぷりとのギャップに、クラーラはどんな顔をしたらいいのかわからない様子でした。
 ですが、彼女はすぐに表情を引き締めると、ぐっと頭を下げて言います。

「魔王様、長老達のご無礼をお詫び申し上げます」

 窓の外の会話が聞こえていなかった私には、ドラゴン族の長老達がどんな無礼を働いたのかはわかりません。
 ギュスターヴがそれを根に持っている様子もありませんでした。

「面倒だから、長老どもは魔女の返り討ちにあったことにしておこう」
「濡れ衣も甚だしいねぇ」
「私が関与したことを知れば、ドラゴン族の族長がまた菓子折りを持って飛んでくる。それを用意させられる妻が気の毒だろう」
「そういうことなら、まあいいけれど」

 などと言い交わす魔界の頂点と次点をよそに、私はくっついてきたクリスと手を繋いで、クラーラの前に進み出ました。
 頭を下げたままだった彼女の顔を覗き込み、笑みを作って言います。

「クラーラ、私とお友達になってくださいませんか?」
「えっ……あ、うん……別に、いいけど……」
「アドレスを交換してください。あとこれ、私の会員制交流場のアカウントです。相互フォローしましょう」
「ぎゃっ……何コレ! えげつないフォロワー数……!」

 なお、タイムラインはヘイヘイアプリ緊急メンテの話題で持ち切りでした。
 携帯端末を囲んでワイワイする私達を、ギュスターヴと魔女が微笑ましそうに眺めています。

「アヴィスとドラゴン族の姫が友達になったならば、族長の妻もママ友グループに招待せねばなるまい」
「そうだねぇ。彼女は友達の友達の友達だから、私が招待しておくよ」

 これには、傍観に徹していたノエルがたまらずといった風に口を挟みました。

「本妻と不倫相手がいるグループ!? 絶対いやでしょっ!」
「「私はまったく気にしないが?」」
「ええー……」

 魔界の頂点の次点は、無神経のツートップだったようです。