「わっ……何ですか? ヒヨコ!?」
「……」

 突然目の前が真っ暗になったかと思ったら、ヒヨコに目隠しをされていました。
 すぐ側からは、魔女の楽しそうな声が聞こえてきます。
 
「あっはっはっ、こわいこわい。ああいう最期は迎えたくないねぇ」
「何が起きているんですか? ギュスターヴは何をやっているんです? ドラゴンさん達の股間はどうして爆発したんですか? 見たいです!」
「いけないよ、アヴィス。親にはね、我が子には見せたくない姿もあるんだよ」
「ギュスターヴは私の親ではないですから、知ったこっちゃないです!」

 ヒヨコの手が外れた時には、全てが終わっていました。
 魔女の家の玄関前には、ドラゴン族の長老達の姿は元より、血や肉片も見当たらなかったため、てっきりギュスターヴに慄いてすごすご退散したのかと思いましたが……

「おやまあ、父親を知らないドラゴンの子が五人も生まれてしまうね。私が引き取ろうか?」
「その必要はない。奥方達はとっくにあいつらに愛想を尽かしていたし、生まれた子はドラゴン族みんなで育てる。不自由はさせない」

 どうやら、跡形も残さず消滅させられたようです。
 私の耳には窓の向こうでの会話が聞き取れなかったため、彼らの何が魔王の逆鱗に触れたのかはわかりませんが。

「ママ、ドラゴンの粉末って、おいしい?」
「さあ、どうだろうね。薬草畑にはいい肥料になったけれど」

 クリスが無邪気な声で、ドラゴン族の長老達の最期を語りました。
 魔女は笑って、その頭をよしよしと撫でます。
 それから、青い顔をしているクラーラに向き直りました。