「それよりも、魔女の方はクラーラに謝ってください」
「ふむ……さきほど、クリストファーもそんなことを言っていたね?」
「ちょっと、アヴィス! 余計なことを……」

 クラーラは私の口を手で塞ごうとしましたが、すかさずヒヨコがそれを阻みました。
 私を挟んで、クラーラとヒヨコが剣呑な空気を纏います。
 それに構わず、私は魔女を見据えて続けました。

「あなたはドラゴン族の長に家庭があると知りつつ、関係を持ったのでしょう?」
「そうだね」
「でしたら、それにより精神的苦痛を被ったクラーラに、あなたは謝罪すべきだと思うのです」
「なるほど」

 魔女は微笑みを浮かべたままでしたが、私の話に真剣に耳を傾けてくれているのはわかりました。
 なおその隣では、クリスがむしゃむしゃ続行中です。
 本当に、よく食べますね。
 魔女はそんな彼のもちもちのほっぺを撫でながら、視線を移して口を開きました。
 私から、隣のクラーラへと。

「確かに、お前さんの気持ちを考慮しなかったのは私の落ち度だ。反省が必要だね」
「どの口がっ……!」

 私の頭越しにヒヨコと睨み合っていたクラーラも、燃えるような目を魔女に向けます。
 魔女はそれを真正面から受け止めると、静かな声で告げました。

「すまなかったね、クラーラ姫」
「……っ」

 ぐっと、何かを堪えるようにクラーラの体に力が入るのを感じました。
 と同時に、テーブルの向こうで魔女が両目を見開きます。
 何事かとその視線を辿った私も、目を丸くしました。