分かっているのです。
 ギュスターヴの戯れで新しい身体を与えられたといっても、私は確かに死んだのです。
 本当の身体は、きっともう棺に入れられて土の下でしょう。
 エミールが、今の私を私として認めてくれるかだって分かりません。
 それでも……

「これまで一緒に生きてきた人が塔に閉じ込められているかもしれないんです。もう共に人生を歩んでいくことは叶わないとしても、せめて彼を自由にしてあげたい……」

 大人しくて引っ込み思案で泣き虫で、けれども優しくて純粋で虫一匹殺すこともできない、まさしく天使のような男の子エミール。
 きっとどんな悪意や困難からも彼を守っていこうと固く心に決めていたのです。
 私を目の前で失い、王太子という立場からも追われ、寂しい塔の上で打ち拉がれているであろう彼を思うとひどく胸が痛みます。
 ええ、痛覚などないというのに、やはり彼を思うと胸が痛いのです。
 どうあっても、私は行かねばなりません。
 エミールを救わねばなりません。

「だって、私はエミールのために生きてきたのですもの」
「でも、あなたは死んだのですよ! 生きている者は自身の力で人生を切り開いていくのです! 死人はそれに干渉してはなりません! あなたは、生きている者にとってはもう終わった存在なんですよ──!!」

 私がどれだけ言葉を尽くしても、門番は頑なに引き止めようとします。
 いい加減腹に据えかねた私は、しきりに開閉するしゃれこうべの顎を引っ掴んでやりました。

「骨、ガタガタうるさい──顎を砕きますよ?」
「ぴええっ」

 ギュスターヴの顎に負けた八つ当たりなんかではないのですよ。
 ええ、断じて。