「ここを通すわけには参りません。大人しくおうちにお戻りなさい」
 

 ギュスターヴがメイドを介して与えてくれた摩訶不思議なカラクリは、携帯端末というそうです。
 隻腕の屍剣士ヒヨコと二人で弄りまくって、操作の仕方はだいたい把握しました。
 そうして、『魔界 脱出方法』で検索。
 難無く巨大な黒塗りの門にたどり着けたわけですが、やはりというか、それを守護する門番が立ち塞がりました。
 ボロボロの黒衣と大きな鎌を装備した、いかにも死神といった風体の骸骨です。
 しかも、厳つい面構えの犬を十頭も連れているではありませんか。
 丸腰の私だけでは、きっと難攻不落の門だったでしょう。
 しかし、二本も剣を下げたヒヨコが一緒なので心強いです。
 その背中に庇われながら、私は背の高い門番を見上げて言いました。 

「おうちは門の向こうにあります。ここを通していただかねば戻れません」
「嘘をおっしゃい。あなた、今朝方生まれたばかりの魔王様の眷属でしょう? すでに魔界中のうわさになっていますよ。よからぬ輩にちょっかいをかけられたくなかったら、魔王様の庇護下で大人しく……」
「ガタガタうるさい骨ですこと。奥歯が噛み合ってないんじゃありません?」
「ひっ……きゅ、急に辛辣にならないで……」

 死んでまで説教をされるのはごめんです。
 私は門番の話を遮ると、再び携帯端末を起動しました。
 
「もういいです──力尽くで通りますので」
「えっ……」

 絶句する門番を放置して、さくさく検索しますよ。