「……あっ!?」

 ぐっ、と二の腕を掴まれたかと思ったら、魔女から引き剥がされてしまいました。
 さらには、同じくらい力強い手に顎を捕まえられます。
 そうして、がぶりと噛み付くように私の唇を覆ったのは──最初にお断りしたはずのギュスターヴの唇でした。

「んふっ……」

 問答無用で注ぎ込まれた彼の精気が、私の脳髄を陶酔させていた魔女の精気を瞬く間に押し流してしまいます。
 おいっ! と怒ったようなエミールの声が聞こえ、私はいつの間にか抱き込まれていたギュスターヴの腕の中で暴れました。
 すると、彼は意外なほどあっさりと私を解放しましたが……
 
「──くどいっ!!」
「他に言いようはないのか」

 何やら不貞腐れたような顔をしています。
 私は負けじと頬を膨らませました。

「くどいオブくどいです。せっかく、魔女の方のがおいしかったのに、台無しです」
「おやまあ、かわいそうに。おいで、魔王の子。もう一度あげようね」

 くすくすと笑いながら、魔女の手がまた伸びてきます。
 私は、一も二もなくそれに飛び付こうとしました。
 それなのに、ギュスターヴに両肩を掴まれて身動きが取れなくなってしまいます。

「アヴィス」
「はい」

 ギュスターヴは私を自分の正面に立たせると、眉間に皺を刻んで言いました。