広い会議室では、魔王と愉快な仲間達が巨大な円卓を囲っていました。
 扉から一番遠い正面に当たる席──世に言うお誕生日席にギュスターヴが、その右隣にノエル、左隣には見知らぬ女性が陣取っています。
 会議室にいたのは、ギュスターヴも含めて十名。
 どピンクのコウモリ姿の吸血鬼ジゼルと、ほぼ裸の夢魔オランジュの姿もあります。
 ノエルとジゼルの間には、上半身が人間で下半身が馬の姿をした者と、全身が灰色の毛に覆われた狼の顔をした者が座っています。ケンタウロスと人狼でしょうか。
 その他、ギュスターヴの左隣の女性を含めて面識のない者ばかりかと思いましたが……
 
「──あーっ!? あんたぁ!! ここで会ったが百年目っ!!」

 扉に一番近い席──つまり、最も下座にいた者が私を指差して叫びます。
 その耳障りな声に顔を顰めつつ、私も口を開きました。

「あら、骨」
「ほ、骨……骨って……骨ですけど! 他に言いようありませんかね!?」

 ガタリと椅子を倒さんばかりの勢いで立ち上がって喚くのは、ボロボロの黒衣を纏った、いかにも死神といった風体の骸骨。
 いつぞや、私がヒヨコとともに魔界の門を出ようとした際に立ち塞がった、あの門番です。
 モブ門番その一くらいの認識でしたが、意外や意外。
 末席とはいえ、幹部会議に呼ばれるような立場にあったようです。
 たしか、プルートーとかいう名前だったような気がします。
 そのプルートーが目を釣り上げて──いえ、骸骨なのでぽっかり開いた眼窩があるだけなのですが──こちらに詰め寄ってこようとしました。
 ところが、彼は突如ぴたりと動きを止めます。
 上座にいたギュスターヴが口を開いたからです。