「どうして──私が会員制交流場に投稿した写真のことを知っているんですか?」

 とたん、ノエルは顔面に笑みを張り付けて口を噤みました。実に胡散臭い笑みです。
 こうなったら、この元天使は頑として口を割りません。
 それを、この半月余りの付き合いで学んでいた私は、さっさと質問の先を変えます。

「ギュスターヴ、どうしてですか?」
「それはな、こいつがお前のアカウントを監視しているからだ」
「えっ? でも、ノエルもブロックしていますよ?」
「いいか、アヴィス。よく聞きなさい。この世には裏アカウントというものがあってだな」

 裏アカウント、とは?
 首を傾げる私の前で、ノエルがギュスターヴに詰め寄ります。

「ちょっと、魔王様! 何、ばらしてくれちゃってるんですか! 困りますっ!!」
「貴様が困ろうと私はまったく困らないから安心しろ」
「何を安心しろと!? アヴィスに嫌われたらどうしてくれるんですかっ!!」
「全力でプギャーしてやる」

 ようは、ブロックされているものとは別の秘密のアカウントで私をフォローしていて、こっそり呟きを眺めているということのようです。
 いやですね、いやらしい。
 その発想がそもそもいやらしいです。ドン引きです。

「どうりで堕ちるわけですね……いえ、堕ちたからこそ、そんななんですか?」
「うっ、アヴィス……なんて冷たい目で私を見るんですか──ちょっと、魔王様! 無言でツボるのやめていただけます!?」
「……っ、腹筋が、つる……」

 とはいえ、腹筋が崩壊しても、ギュスターヴが私を腕から下ろして解放する気配がありません。
 まさか、城で大人しくしていろと忠告されたにもかかわらず、地界に行ってしまったことを根に持っているのでしょうか。
 そもそもフラグを立てたのはギュスターヴなのにと思いつつ、私は一応言い訳めいたものをしておくことにしました。