「グライスもパルスも、出ておいで。父様が来たからには、もう大丈夫だ」
「え……」

 彼女の身体は凍り付いた。

「父様」
「母様」

 柱の陰から幼い双子の兄妹が現れて、寄り添って立つ両親の前までやってくる。
 愛する我が子達の顔を、しかしローザは愕然として見下ろしていた。

「あなた達……そこで、聞いて……」
「姉様は、母様を助けにきてくれたんだよ」
「アヴィス姉様は、母様をとても愛していらっしゃったから」

 ローザは今の今まで、子供達が近くにいることを知らなかったのだ。
 知らなかったからこそ、これまで負の感情をひた隠しにしていい義姉を演じていたことを暴露してしまった。
 一途に自分を慕ってくれていた義妹を、ひどい言葉で拒絶してしまった。

「ぼくは、姉様が好きだよ」
「私も、アヴィス姉様が好きです」

 グライスとパルスはそう告げると、真っ青になって立ち尽くす母を哀れみを込めた目で見上げる。
 それから、母にも、我が子である自分達にも、本当は少しも興味がない父を一瞥してから、そっと互いの手を握り合った。

 グライスとパルスは、自分達がアヴィスを召喚した事実も、その方法も、誰にも打ち明けることはなかった。