血塗れの廊下に、一際太陽の光が差し込んできました。
 私の肩に止まっていたジゼルは、それから逃れるように柱の陰に移動します。
 黒から白銀色へと変わった私の髪が光を受けてキラキラと輝く一方で、陰になった客間の入り口に立つその人の表情は、暗く闇に沈んでしまっているように見えました。

「……あね、さま?」

 家令やメイド長、彼らの三男であるトニー、その他のローゼオ家の使用人達も、驚きこそしたものの蘇った私を受け入れ、再会を喜んでくれました。
 エミールはこの色が気に入らない様子ではありましたが、再び生きて出会えたこと自体は涙を流して喜びましたし、兄に至っては生きてさえいてくれればいいとまで言ってくれました。
 グライスとパルスだって、魔法陣で魔界から召喚された私を生前と変わらぬ様子で慕ってくれています。
 だから──私は、楽観しておりました。
 義姉様も当然、私との再会を手放しで喜んでくれると思っていたのです。
 きっと、兄と同じように私をぎゅっと抱き締めて、色なんてどうでもいい、どんな形でも、どんな姿でも、アヴィスが生きているのなら、と言ってくれると信じて疑いもしなかったのです。
 しかし……

「いや……いやよ! どうして! どうして!?」

 私はここでようやく現実を知ります。
 私を見つけた義姉の顔に浮かんでいるのは喜びなどではなく、恐怖と嫌悪と──そして、凄まじい絶望でした。

「どうして戻ってきてしまうの? やっと……やっと、あなたから解放されたのに!!」