「姉様に何をするっ!!」
「アヴィス姉様ぁ!!」
「ぎゃーっ!! アヴィスううう!!」

 グライスとパルス、それからドリーが三者三様の悲鳴を上げました。

「はわ……びっくりした……くらくらします……」

 当の私はというと、まあ相変わらず痛覚はないので痛くも痒くもないのですが、衝撃が凄まじかったものですからすぐには立ち上がることができません。
 脳みそが揺れているのか、頭の中がぐわんぐわんとしています。
 そうこうしているうちに、ぎゃっ、という短い悲鳴に続き……

「うひゃっ……」

 私は不覚にも飛び上がりました。
 なにしろ、私を引っ叩いた男の首が、突然ぼとりと目の前に落ちてきたのです。
 いやですね。目が合ってしまいました。

「きさまあああ!! よくもおおおおっ!!」

 ケダモノのごとき咆哮を上げながら、ドリーが首のない身体を粉砕しております。
 明らかに絶命している相手に拳を振り下ろし続ける彼女の姿に、私も双子もドン引きでした。
 後ほど掃除をするローゼオ家の使用人達があまりにも気の毒なので、ぐっちゃぐちゃにするのはやめてほしいものです。
 そんなこんなで結局は大騒ぎになってしまったものですから、客間にいた者に気付かれてしまうのも当然でしょう。