「トニーの言っていたことは本当だったのですね!」
「ああ、お嬢様! またお会いできるなんて夢のようです!」

 トニーの父親である家令とその妻であるメイド長は、私の左右の手をそれぞれ握りしめておいおいと泣き出しました。
 彼らにつられるように、他の使用人達も早々に衝撃から立ち直って私との再会を喜び始めます。
 一度死んで色違いになってしまったにもかかわらず、こうして自分が受け入れられたことを嬉しく思いましたが、しかし私はいつまでも喜んではいられませんでした。
 というのも、大広間には義姉の姿だけがなかったからです。

「奥様は、反乱軍を率いる前大臣と交渉するとおっしゃって、一階の客間に向かわれました」

 家令の言葉に、私はドリーとジゼルとともに、今度は一階へと急ぎました。
 グライスとパルスも一緒に行くと言ってきかなかったため、仕方なくつれていきます。
 一階には、さらに大勢の反乱軍が詰めておりました。
 といっても、グリュン王国の騎士団は全員兄の部下で、自分たちを犬と蔑んだ前政権の連中をよく思ってはおりません。
 そういうわけですので、前大臣が率いてきた反乱軍の大半は金で雇った傭兵のようでした。
 もちろん、これもドリーが容赦なく粉砕して進みます。
 その背中を眺めて、私の肩に止まっていたジゼルが呆れた風に言いました。

「いやですわ、野蛮な山羊ですこと。ねえ、アヴィス。あのケダモノ、いつまでも暴れさせておいてよろしいんですの?」
「よろしく……は、ありませんね」

 私はグライスとパルスに離れた場所で待つよう言い聞かせると、リボンの結び目から引っこ抜いたモンコツを握りしめてドリーに近づきます。
 そうして、今まさに傭兵の首を捥ごうとしていた彼女の後頭部をポコンッと殴打しました。