「──いやな予感がする」



 魔王ギュスターヴがそう呟いたのは、地下牢から城へと戻る階段を半分ほど上った頃だった。
 後ろに付き従っていた堕天使ノエルが、はて、と首を傾げる。

「あなたが気にかけるのですから、そのいやな予感というのはアヴィスに関することなのでしょうか?」

 ノエルがそう言い終えるのを待たず、彼の前からギュスターヴの姿が消えた。
 おそらく、アヴィスの所にすっ飛んでいったのだろう。

「アヴィスが来てから、魔王様はいきいきするようになりましたねぇ」

 一人、暗闇の中に取り残されてしまったノエルは、やれやれと肩を竦めて苦笑した。