「グライス! パルス!!」
「姉様!」
「アヴィス姉様!!」

 私は起き上がる間も惜しんで、彼らの背中に腕を回しました。
 グライスとパルスも、ぎゅうぎゅうと強い力でしがみついてきます。
 もう一時も離れたくないというように抱き締め合う私達を、ドリーは呆気に取られた顔で見下ろしていました。

「姉様……ああ、姉様。こんなにあたたかいのに……!」
「アヴィス姉様……ねえ、本当に死んでしまったの?」
「ええ、そうなの……」

 八歳で両親を亡くして兄夫婦に育てられた私にとって、グライスとパルスは甥と姪というよりも弟と妹という感覚でした。
 私は彼らを深く愛していましたし、彼らもまた私をとても慕ってくれていたのです。
 そして、そんな愛しい双子に別れも告げられぬまま、私は一度死んだのでした。

「「どうして……どうして、死んでしまったの……!!」」
「ごめんなさい……」

 幼子達の涙が私の胸をしとどに濡らします。
 痛覚なんてないというのに心が痛くて痛くてたまらず、私も泣き出してしまいたくなりました。
 ちなみに、ドリーはすでに泣いています。もはや号泣です。

「ひぐっ……アヴィスが死ぬなんて……いやよぉ……」

 ツンデレで面倒くさいですけど、彼女のこういう素直なところはなかなか好感が持てます。
 まあ、調子に乗るので本人には絶対言いませんけど。
 大量の本に囲まれた薄暗い書斎に、グライスとパルスの啜り泣く声がより一層陰を落とします。
 まあ、ドリーのずびずびずびびーっ! という盛大に洟を啜る音のせいで、シリアスな雰囲気は早々にぶち壊されてしまったのですけれど。
 燭台の横に置かれた時計は三時を指しています。
 時間は魔界も地界も変わらないようなので、午後三時と考えていいでしょう。
 それにしましても、昼間でさえ一筋の太陽の光も入らぬこんな場所で、幼い双子は一体何をしていたのでしょうか。
 それに、私とドリーもどうしてここにいるのか分かりません。
 グライスとパルスの柔らかな髪──義姉譲りの茶色の髪を撫でながら、私はそんな疑問の答えを探していました。
 と、その時です。


「そこの子供達──どこでこれを知ったんですの?」