「……姉様?」
「……アヴィス姉様なの?」

 ふいに懐かしい声達が耳に届き、慌てて辺りを見回します。
 そうして、声の主達が本棚の陰で身を寄せ合っているのに気づきました。
 栗色の髪と青い瞳の、瓜二つの顔をした男の子と女の子です。
 私が息を呑むのと、彼らがわっと駆け出してくるのは同時でした。

「姉様!!」
「アヴィス姉様!!」
「な、何やつぅ!?」

 ドリーが慌てて私を背に隠そうとしましたが、それを押しのけて前へ飛び出します。
 ちょうどそこに男の子と女の子が体当たりをしてきたものですから、受け止めきれなかったか弱い私は、ドターンと後ろにひっくり返りました。

「ぎゃああ!?」

 悲鳴を上げたのはドリーです。
 私もまたとっさに、イタッとか言ってしまいましたが、やっぱり痛覚はないので実際は全然痛くありません。
 そろそろタンコブくらいはできているかもしれませんが。
 いいえ、そんなことより……

「グライス、パルス……?」
「「はい」」

 床に仰向けに倒れ込んだ私にしがみついているのは双子で、男の子がグライス、女の子がパルスといいます。
 彼らは、十歳になる兄夫婦の子供達──つまり、私の甥と姪だったのです。