「貴様は、アヴィスを殺したのは己の独断だと言ったが……それでは、神はあれの存在をどう考えている?」
「地界で生まれたものは皆、人間も動物も何もかもが神の子です。アヴィスのことも、我が子の一人として大切に思っておられるに決まっているでしょう」

 それを聞いたギュスターヴは、心底ムッとした。

「あれは──アヴィスはもう、私の子だ。私の血肉で生きているのだからな」

 カリガも負けじと言い返す。

「いいえ、もとよりあの子の魂は神のもの。あなたはただ徒らに器を与えただけのこと」

 現在の主君と元同僚のやりとりを面白そうに眺めていたノエルも口を挟んだ。

「私も天使をやっていたことがあるから分かります。肉体など、天使にとって所詮は魂の器という認識でしかありませんものね。だから、アヴィスに毒を盛るのに罪悪感も何もなかったのでしょう。ただ、天界に連れ帰るのに邪魔なものを捨てさせた。あなたにとってはそれだけのこと」

 ふいに、ぼっと音を立てて炎が上がった。

「……っ、ぐっ!」

 カリガが悲鳴を噛み殺す。
 燃えているのは、ズタズタになった彼の左翼だ。
 青白い炎に包まれる天使を、魔王は氷のような目で見下ろした。