「僕の話を聞いてくれる、そう約束したはずです」


ふっとこぼすように、祈くんが微笑んで。


「俺は、季衣がいないこれからなんて考えたくねえ」
「……識くん」
「季衣が俺を信じてくれたみたいに、今度は俺が季衣を信じる。そのためには、季衣が近くにいてくれねえと困るんだよ」


識くんが、わたしの頭をガシガシと撫でる。


「わっ……し、識くん」
「だから、俺らと一緒にいろよ」


それから、のぞきこまれるように識くんの顔がドアップになる。


「あっ、識だけずりい!」
「ずるいなどという問題ではないでしょう、海音」


みんながわたしを、必要としてくれてる。
そのことがすっごく嬉しくて、涙が出ちゃいそう。


「季衣」


識くんがわたしを呼ぶ。


「俺たちにとって、季衣はすっげえ特別なんだよ」
「……ッ!」


ああ、だめだ。
そう思ったときには、もう涙がどんどん溢れていた。
特別だって、そう言ってもらえることなんてないと思ってたのに。
ここにいる人たちは、みんな、わたしを大事にしてくれてる。


「ッ……あ、ありがとう……! わたしも、みんなのこと特別だよ」


それに、ここにいない人も──わたしにとっては特別だった。




家に帰って、ドキドキしながらママを待った。
【話したいことがある】って連絡だけはして、そしたら【すぐ帰るからね】ってママから返事がきた。