「……わたしは、ここには入れません」


でも、それは、わたしが”男の子の格好”してるから、ここにいられるだけの話。


「みんなも知ってると思うけど……わたしは、男の子じゃないから。それに、みんなと違って、普通だから」


わたしは、みんなとは違う。
だれかに憧れてもらえるような人じゃない。


「だから、ごめんなさっ──」
「季衣」


すごく温かい声で識くんがわたしを呼んだ。


「季衣だって特別だよ」
「……え?」
「普通っていうのが俺にはわからねえ。だれだって”特別な人間”だろ? なんで季衣は普通にこだわるんだよ」
「だ、だって……わたしは、」


わたしは、なんで普通なんだろう。
なんで、自分のことを普通だって思うんだろう。


「オレにとって季衣は特別だぜ!」
「海音くん……」
「前に言ってくれたろ? 海音くんは強いって。そんなの、季衣だって一緒なんだから!」
「わたしが、海音くんと一緒……」
「季衣は強いよ! オレを変えちゃうぐらい」


嘘じゃないって、そうわかるぐらいの笑顔を向けられる。


「ボクも、季衣ちゃんの言葉に救われたよ?」
「……宇宙くん」
「季衣ちゃんがくれる言葉で、ボクは前よりちゃんと眠れるようになった」


ぎゅっと、手を繋がれる。
その手は、わたしより大きくて、温かい。


「そうですね、僕も同じです」
「祈くん……」