ママは、わたしのためにずっと優しいママでいてくれたのに。
わたしのために服を作ってくれてたのに。
泣かせたく……なかったのに。




気付いたら朝になっていた。
外は明るくて、部屋の外からなにも音が聞こえてこない。
そおっと部屋を出てみると、ママの姿はなかった。
リビングのテーブルに朝食と手紙が置いてあった。


【お腹空いてるでしょう。朝だけでも食べてね】


読んだら、また涙が溢れてきた。
あんなこと言っちゃったのに、ママはいつも通り朝を準備してくれてた。


「……どうしたら、いいんだろう」


女の子の格好をするのは怖い。
それをだれかに見られたらって思うと、またからかわれるんじゃないかって。
……イジメられるんじゃないかって。
そう思うだけで怖くて……女の子の格好で外に出ることすら出来なくなって。
いつも公園まで早歩きして……男の子の格好に着替える。
そうしたら、少しは自信が持てた。だれもわたしのことをからかわない。
それどころか、男の子の格好をしたから、識くんたちとも仲良くなれて……。
でも……それは、みんなを、だましてたってことになるんだよね。
Kis/metは女の子禁制。わたしは、入っちゃいけないんだ。
お風呂に入って、それからまた、男の子の格好をする。
ママがいないから、この格好でいられるけど、でも……これからどうしたらいいんだろう。