むしろみんなに助けてもらってしまった。
あそこで識くんたちが来てくれなかったら、わたしはどうなってたんだろう。
──自分で自分を守れない。
祈くんに言われた言葉を思い出す。
本当に、その通りだったなって実感する。
わたしひとりではどうにも出来なかった。


「なあ、季衣」
「ん?」
「本当にKis/met入らないか?」


夕日を浴びた識くんが、とても真剣な顔でわたしを見ている。
「季衣がいたら、俺たちは最高の仲間になれると思う。つーか、季衣がいるから一致団結できてるところもあるし」


たしかに、ここ数日はいろんなことがあったけど、すごく充実していた。
楽しかったことも、悲しかったことも、ぎゅっと詰まってるような日々で。
──でも。


「……入れないよ。わたしは、みんなと違って普通だから」
「なんだよ普通って」
「特別な人間じゃないってこと。Kis/metに入れるような人間じゃない」


もし特別な人間だったら、もし識くんたちみたいに選ばれた人間だったら。
──ママのドレスも、似合ってた。
ママのことを悲しませなくて済んだ。
今のわたしは、嘘を固めてできたような人間。
今だって、男の子の格好をして周りに嘘ついて、ママの前でだけドレスを着て。


「わたしは、わたしが一番嫌いなんだ」
「……なんだよ、それ」