「当時の序雨火亜は派閥争いが起こっていたようです。次第に過激になっていったことで、そのケジメとしてあなたの兄は序雨火亜から抜けることで終止符を打ったんです」
「なんで……なんで兄がそんなことを」
「責任を取る──それが最後の言葉だったようです。むしろ納得してトップをやめているわけです。その後釜として識が選ばれただけで」


識くんは、清白くんのお兄さんを傷つけるようなことはしてなかった。


「……うそだろ……一善識は……悪くないのか?」


信じられないといった様子で清白くんがつぶやいた。


「識が悪いわけねえじゃんか!」
「そうだよ、識くんは悪くない」


ふんと仁王立ちする海音くんと、いつの間にか壁にもたれかけるように座っている宇宙くん。
それから、祈くんがすでに手配していた学校関係者の人たちが来て、清白くんは職員室へと連れて行かれた。
準備室から出ていく間際、清白くんはとても小さな声で「ごめん」と言っていた。




「よかった……本当に」


帰り道、わたしは識くんと一緒に歩いていた。
祈くんは理事長への報告があるとかでまだ学校に残ってて、海音くんはこれから大食い選手権があるとかで走って学校を出て行って。宇宙くんはお迎えの車が到着するまえから眠っていた。


「ありがとな、俺のこと信じてくれて」
「ううん、むしろ信じることしか出来なかったけど」