だけど、識くんのものは最初から理由なんてなかった。
識くんを知れば知るほど、なんで窓ガラスを割ったかなんてわからなかったけど。


「……識くんは、悪くないよ」


ずっと、人助けばっかしてる人だった。
わたしのことだって、学校で迷子になってたときに助けてくれて。
そんな人が、悪いはずない。


「……なにも知らねえくせに調子のるな!」
「あなたよりはずっと知ってるよ!」


自分でもびっくりするぐらい大きな声が出た。


「識くんは優しい人だよ。だれかのために動ける人。わたしは識くんを信じる!」


今度はわたしが、識くんを助けたい。
そのためにも、識くんを最後まで信じたいから。


「涼風季衣」


気づけば祈くんが立っていた。後ろには海音くんに宇宙くんもいる。


「あなたの言うとおり、識は悪人ではありません」


そういって、祈くんは手にしていた紙を読み上げるようにして言った。


「僕なりに清白事件を調べてみました。清白とは、ここにいる人間ではなく兄のほうですが、彼は自ら序雨火亜のトップをやめたんですよ」
「……は? 兄貴が自分でやめた?」