さっきまでわたしに敵意を向けていたその目が、今では怯えたものになっている。


「……清白(きよしろ)、お前なにやってんだ」


扉の向こうにいたのは、見たことないほど怖い顔をした識くん。
それに、祈くんや海音くん、宇宙くんもいる。
清白と呼ばれた彼は、しりもちをついていた。


「そ、そんなのありかよ……! なんのための鍵だよ!」
「うるせえよ、こんなもんどうとでもなる。つーか」


識くんがわたしを見る。


「季衣、大丈夫か?」
「う、うん! 大丈夫」
「そっか……よかった」


それから識くんはまた清白くんに視線を戻す。


「……お前、俺だけじゃ足りねえのかよ。いい加減にしろ」
「そ、そんなの仕方ないだろ! お、お前が悪いんだ! 兄貴をあんな目に遭わせて」


震えながらも、清白くんは話し続ける。


「だからお前が不幸になればいいって、ガラス割ってお前をここから追い出そうとしたのに……理事長はお前の味方するし。今回だって、今回だって、なんでお前はまだここにいられるんだよ!」


おかしい!って叫ぶ清白くん。ふと、清白くんの制服に、なにかが見えた。
……これ、血のあと?
もしかして──
「あの日、識くんが助けた人?」


ボーリング帰り、識くんは同じ制服を着た男の子を助けていた。
あのときはよく顔も見えなかったし、ケガも酷そうだったから、今の今まで気付かなかったけど。