「やり方が最悪でして……ケガをさせた挙句にもう二度と暴走族なんてできないよう根回しもしたんです。おかげで兄は……あは、喋ってしまいました。すみません、前のトップは俺の兄だったんで」


この人の……お兄さん?


「兄にとって序雨火亜は全てだったんです。最強だった兄が自慢でした。でも、一善識が現れたことで……すべて壊された」


識くんは、暴走族のトップになりたかったわけじゃないっていってた。
気付いたら自然とそうなってて、でもやめたって話してくれたけど。


「兄は一善識にぜんぶを奪われた……もう今では家に引きこもりっぱなし。あんな兄にしたのは、あいつのせいだ」


だんだん、表情が崩れていって、その目がわたしを睨む。


「だから決めた……あいつが大事にしてるものを全部俺が奪ってやろうって」
「……そんな、識くんは悪く──」
「悪くないとでも!? んなわけねーだろ! あいつが不幸にならねーと意味がねえ! 俺が……俺が兄の復讐を……!」
「──季衣!」


扉の向こうで声が聞こえる。同時に、ガンガンと扉を蹴るような音がする。


「そこにいんのか!」
「識くん……? い、いるよ……ここに!」


ガン、ガン、何度も音が続いて、それからすぐに、思いっきり扉が倒れてくる。


「な、なんで……なんだよそれ!!!」