なんでこの人が、わたしのことを……女だってことを知ってるんだろう。


「ああ、別にあなたはバレてもいいんでしたっけ。じゃあ一善識を助けたいなら、ついてきてくださいよ」
「し、きくん?」
「退学にさせたくないんでしょう? なら話しましょうよ」


話すってなにを……?
ついていかないほうがいいってわかってる。
でも、識くんのことを助けられるなら──わたしに出来ることがあるなら、断ったらいけない気もする。


「……わかりました」
「話が早くて助かります。じゃあ、行きましょう」


そう言って連れて行かれたのは、体育館奥にある準備室。マットや跳び箱があるその場所には、光も少ない。
薄暗くて、逃げ出したい。


「涼風さんは、一善識がいかに悪い人間かってことは知ってますか?」
「……え?」


ガラガラと、扉が閉められる。がちゃりと聞こえたのは、おそらく鍵をかけたのだろう。


「一善識が暴走族のトップだったって話は知ってますよね?」
「……だからなんですか?」
「じゃあ、なんでトップになったかわかります?」


笑ってる。なのに、なんで笑ってるように見えないんだろう。


「……わからないです」
「当時のトップを引きずり落としたんですよ」
「……え?」