「ならば、こういうときどうするんです?」


海音くんと宇宙くんから引き離されるように祈くんの腕の中にぽすっと収まる。
だ、抱きしめられてる……!?


「あ、あの……祈くん!?」
「僕から逃げてください」
「え……?」
「ここから逃げる。出来ますか?」


抱きしめられる力が強くなる。
何度も肩を叩くけど、ビクともしない。


「まだこれは序の口です。相手は、あなたを襲うかもしれません」
「!」
「相手が武器を持っていたら? 相手にもし殴られたあとだったら? あなたは自分を自分で守ることができますか?」
「……」


──できない。
だって、今でさえわたしは祈くんの腕の中から逃げられない。
でも、犯人は抱きしめるなんて生易しいことはしないはずだ。
これより酷いことをされるかもしれない。
そのとき、わたしは足手まといになってしまう。


「……すみません、手荒な真似をしてしまって」


祈くんの力がふっと弱まる。
力強かったけど、痛いと感じることはなかった。
それは、祈くんがわたしに手加減してくれたから。


「あなたが識を想う気持ちは、僕らも同じです。だから、任せてもらえませんか」


犯人探しを手伝えない。
それは、みんながわたしのことを想って判断してくれたこと。
わたしだって識くんを助けたいけど、でもわたしがいることで、みんなが自由に動けなくなるぐらいなら。