持ったばかりのピンクの箸。リボンがついたそれを、落としそうになった。


「ここ最近は楽しそうにしてたの、見てたらわかるわ。でも、今日の季衣はやっぱり元気がないように見えるから」
「それは……」


仕事で忙しいはずなのに、ごはんは毎日必ず作ってくれる。
こうして一緒に食べることだって、ママは喜んでやってくれる。
だからかな。
たった1日の違いでも、ママはわかってしまう。


「……ごめんね、心配させて」
「ううん、季衣が謝ることじゃないのよ? ただ、ママが聞いていい話だったら、なんでも聞かせてほしいの。季衣にはいつだって、心から笑っていてほしいから」


ママはやさしい。
わたしの一番の味方でいてくれる。


「……学校でね、仲良くしてくれる子がいるんだけど。その子が、なんていうか……悪いことに巻き込まれちゃってて」
「悪いこと?」
「……うん、やってないことを、その子が犯人だってみんなが思っちゃってるの。わたしだって、その子が犯人だって思ってるわけじゃないけど……でも、どうしたらいいかわからなくて」


識くんが犯人じゃない。
でも、識くんは自分が犯人だって認めてる。


「その子は……犯人を庇ってるかもしれないんだ。だから、その子は”自分が犯人だ”って言うの。……きっと、違うのに」


ううん、きっとじゃない。
絶対に違うってわかってる。