でも海音くんと宇宙くんは「そうだった」と小さく納得してた。


「最初は、不審者が侵入したって話だったよな?」
「うん……でも、その数時間後には、”その時間、一善識を学校の近くで見た”って噂が流れて」


思い出すみたいにして話すふたりに、祈くんは「ええ」と言った。


「その噂は瞬く間に広がり、本人の耳にも、そして僕ら生徒会の元にも届きました」
「そ、それでどうしたんですか……?」
「当然、識に確認しました。そのときの識を僕はハッキリと覚えていますよ」


祈くんがすっとメガネを押し上げる。


「識は、否定したんです」
「え……?」
「”俺じゃない”──たしかにそう言いました」


否定していた?
じゃあ、識くんにとって、最初の事件は身に覚えのないものだったってことだよね。


「ですが翌日、今度は”自分がやった”と言いに来たんです。それからは何度聞いても、犯人は俺だの一点張りでした」


どういうこと?
たった1日で識くんになにかが起こった。


「なぜ最初に否定したのかという点については”寝たら忘れてた”と言ってましたが、おそらく嘘でしょう」
「寝て忘れるようなことじゃねえしな!」
「僕もそう思う」


生徒会のみんながそう言うってことは、やっぱり識くんが犯人じゃない。


「識は、だれかを庇っています。そして庇っている相手こそが犯人のはずです」