お願い、識くん。俺がやったなんて言わないで──


「認めるよ。俺がやったんだから」


そう言った識くんは、ひとりで生徒会室を出て行った。




「祈、お前も本当に識がやったって思うのかよ!」
「識くんはやってない……!」


海音くんと宇宙くんが、いつもの席に座った祈くんに駆け寄る。
わたしも慌てて追いかけるけど、言葉がなにも出ない。


「はあ、あなたたちは前回もそうでしたけど、識を過剰に信頼し過ぎです」


祈くんがため息まじりに言う。メガネをくいっとあげ、パソコンを立ち上げている。


「あ、あの……! わたし……も、そう思う」
「あなたまで……本当、識の信者がたくさんいるようですね」
「信者とかじゃなくて……」
「わかっていますよ、識がやっていないことぐらい」


カタカタと、祈くんがパソコンのキーボードを打ちながら言った。


「え……やってないって……」
「これを見てください」


祈くんが見ていたパソコンの画面が、わたしたちに向けられる。


「防犯カメラ……?」
「ええ、昨夜の記録をこちらに回してもらうよう手配していたんです。案の定、ここに」


それまで動きのなかった暗闇の中。
黒い服を来ただれかが学校に侵入しようとしている姿が映った。


「こ、これ!」
「おそらくこの男が今回の犯人でしょう。背丈、歩き方、手の動き、どこを見ても識ではありません」