『識は学園中の窓ガラスを全部割った罪』


そういえば、海音くんが教えてくれたことがある。
でも、そんな……だとしたらどうして?
識くんが窓ガラスを割ったなんて信じられない。


「季衣ちゃん」


宇宙くんの、眠そうじゃない声が聞こえてはっとする。


「生徒会室行こう」
「え……」
「ふたりも、そこにいるから」


ふたりって……もしかして識くんと祈くんが?


「……わかった」


今は本当のことを確かめないと。
識くんがやったわけじゃないって、本人に聞けば大丈夫のはずだから。




生徒会室の前にも人がたくさんいた。
中で話されていることを聞こうとしているみたい。


「ちょっと通るからなー」


海音くんが周りの人たちに、やさしく声をかける。
その後ろを、宇宙くんに手を引かれてついていく。
海音くんは生徒会室の扉を一回ノックしたあと、最小限のスペースだけ空けて中に入った。
わたしたちも続くように入る。


「……」
「……」


生徒会室の中には、識くんと祈くんがいた。
ふたりとも黙っていて、今までなにを話していたかわからない。
祈くんが静かに言った。


「もう一度聞きます。学校中の窓ガラスを割ったのは識ですか」


怒ってるみたいで、でも冷静な声。
面と向かってソファーに座るふたり。祈くんは真っ直ぐ識くんを見ていたけど、識くんは天井を仰ぐように見ていた。